胆石ってどんな病気?

外科知久 才穂子

はじめに

皆さんの近くにも胆石の手術を受けたとか、胆石発作で悩んでいるなどという方が、いらっしゃるのではないでしょうか。しかし、胆 石、胆石とよく耳にするものの、実際どんな病気なのか、ご存じない方も多いかと思います。今回は胆石症について、わかりやすく説明したいと思います。

肝臓のメカニズム

肝臓では食事で摂取した脂肪分やビタミンの消化吸収を助ける胆汁という消化液を作っています。肝臓で作られた胆汁は肝臓の裏に付いている胆のうという袋に一旦貯められて濃縮されます。さらに食事をとるとこの胆が収縮し、胆汁が胆管という管をつたって胃の先の十二指腸に排出され、食べ物と一緒になり、消化吸収されていくというような仕組みになっています(図参照)。

胆石というのは、多くの場合この胆汁が貯められる胆のうの中に出来る石のこと(胆のう結石)を指します。もちろん例外もあり、胆のうの下流の胆管に出来る場合(総胆管結石)や、胆のうより上流の肝臓の中の胆管に石が出来る場合(肝内結石)もあります。しかし、8割以上の胆石は胆のうの中に形成されます。

日本人の胆石保有率は年々増加しており、 現在では日本人成人の10人に1人は胆石を持っていると言われているほどです。理由としては、食生活の欧米化や高齢化、また検査が普及して発見される率が高くなったことなどが挙げられています。性別では女性が多く、中年期以降の肥満の方でよく見られる病気です。

また、胆石と一言で言っても石のタイプが幾つかあり、石のタイプによって原因も異なります。最も頻度が多いものはコレステロール系結石と言われるもので、高脂肪食や肥満、 高脂血症、糖尿病などが原因となります。これらの病気のために体内の過剰なコレステロールが胆汁に排出され、胆汁に溶けきれなくなったコレステロールが固まりを作り、これを核にして石が出来ていくというものです。

しかし、胆のうに結石があっても多くの場合は無症状で、症状が出るのは胆石持ちの方の20%ほどです。上腹部の違和感や腹部膨満など、胃や腸の症状と区別が難しいことも多いですが、胆のう結石に特徴的な症状は胆石疝痛と呼ばれる腹痛です。これは脂肪分の多い食物を摂ったあとに起きる上腹部、とくに右の肋骨の下辺りの周期的な痛みで、背中や右肩のコリや痛みを伴うことがあります。この症状は胆石が胆のうの出入り口をふさいだり管につまったりして、胆汁の流れを妨げることにより起きます。この状態で胆のう内に細菌が感染すると、高熱を出します(急性胆のう炎)。

前述のように、胆石があっても症状がない場合も多く、この場合は積極的な治療の対象にはなりません。しかし、胆石発作を起こした場合や、細菌感染を起こして胆のう炎を発症した場合には治療の対象となります。現在、第一選択となっている治療は手術で胆のう(袋)ごと胆石を取り除く治療です。内服薬で石を溶かす治療などもありますが、長期の内服が必要な上に、石が消失するのは3~5割ほどで確実性が低く、あまり推奨された治療ではありません。胆のうをとる手術については、現在は腹腔鏡手術という低侵襲な手術法が普及しており、当院でも年間60件ほどこの手術を行っています。以前は大きくお腹を開 いて手術を行なっていましたが、腹腔鏡手術では、お腹に1.5cm ほどの穴を3~4箇所あけるだけの傷になるので、手術後の回復も早く、当院の場合、標準で4~5日の入院期間で退院される方がほとんどです。もちろん胆のうの炎症のために周辺の臓器と癒着している場合や、胃の手術を受けたことのある方などの場合は、開腹手術で行わざるをえないケースもあります。

最後に

胆石が出来ないように日常生活で心がける ことは、脂肪分の多い食物や過食を避け、バランスの良い規則正しい食生活を身に付けることです。魚中心のいわゆる和食が良いでしょう。過労やストレスを避けて、定期的に適度な運動をし、穏やかな日常を送ることも大切です。しかし、もしここ最近、食後(とくに油物を摂った後)に右の上腹部や背部の違和感・疼痛などの自覚症状があるという方がいらっしゃいましたら、胆石が原因となっているかも知れません。一度、外来でご相談ください。