肺炎と生活習慣病との関連をご存知ですか?
内科知久 慎一郎
肺炎について
2011年の厚生労働省の報告では、肺炎は脳血管障害にかわり日本人の死因の第3位となりました。ちなみに1位は悪性新生物、2位は心疾患です。
皆さまは肺炎と聞いて、どんな病気か分かるでしょうか。風邪の延長?高齢者の病気?実は肺炎にもいろいろと種類があります。肺炎球菌やマイコプラズマなどの細菌による肺炎は代表的なもので、市中肺炎と呼ばれます。インフルエンザや風邪などから引き続いてなることがあり、若年者にもみられますが特に高齢者に多いと言われています。
一方で近年増加が著しいのが誤嚥性肺炎です。物を飲み込む能力や咳をする力が衰えると口の中の細菌が気管に入りやすくなり、誤嚥性肺炎になります。高齢者が増加した結果、老化現象の延長とも言えそうなこの誤嚥性肺炎が増加していることは事実です。しかし、誤嚥性肺炎は高齢化だけではなく生活習慣病の増加とも密接な関連があります。糖尿病や高血圧、脂質異常、肥満、喫煙は別名「死の五重奏」とも呼ばれる生活習慣病であり、脳梗塞や心筋梗塞などにかかる危険となります。
生活習慣病と肺炎
脳梗塞になると、後遺症で飲み込み能力が低下し、誤嚥性肺炎になりやすくなります。心筋梗塞によって心機能が低下し少し動くだけでも息苦しくなれば、食事でも息切れして誤嚥しやすくなります。また生活習慣病は私たちの免疫力、つまりバイ菌と戦う力を低下させることから「肺炎そのものにかかりやすく」なります。
生活習慣病と肺炎の間には非常に密接な関係があるのです。老化は生理現象ですので予防はできませんが、大事なことは「生活習慣病は予防できる」という違いです。肺炎の死亡率が増加している背景には高齢化だけでなく、生活習慣病の増加も関係していることをご理解いただけましたか?
生活習慣を改善するには
一方で、皆さまもご存知のように生活習慣の改善と言っても口で言う程容易くはありません。間食を我慢したり、運動したり、長期間の喫煙習慣を絶つなどは大変なことです(私も慢性的な運動不足です)。これは個人の意識によるところが非常に大きな比率を占めておりますが、今回は肺炎と生活習慣との関連についてなので、肺炎予防を念頭に置いた生活習慣改善のポイントを3つ提示させていただきたいと思います。
1つ目はやはり「規則正しい生活を送る」ということです。3食の食事で十分に栄養を摂り、よく睡眠時間を取ることは免疫力を強化し肺炎だけでなくあらゆる病気予防の原点となります。
2つ目は「口の中をキレイに保つ」ことです。口の中のバイ菌が気道に入ることで誤嚥性肺炎となることから口腔衛生を保つことは有効な肺炎予防法となります。
3つ目は「ワクチン接種」であると思います。インフルエンザワクチンは有名ですが、肺炎球菌に対するワクチンも市販化されています。打てば必ず予防できるという訳ではありませんが、先ほどの市中肺炎のみならず誤嚥性肺炎に対してもある程度の予防と重症化の阻止について有効性が認められています。保険適用が限られているため自費になってしまうのが難点ですが。
ご希望の患者さまは主治医にご相談ください。
最後に
肺炎は主に内科の病気ですが、違う病気で入院してもその後に肺炎を合併することも多く、結果的に肺炎による死亡だけでなく現疾患での死亡率も上がってしまいます。最近は耐性菌といって抗菌薬が効きづらいバイ菌も増えてきており、予防が肝腎であると改めて感じています。今回のお話が皆さまのお役に立てばうれしい限りです。