足の痛みでこんなことに!

心臓血管外科川﨑 裕満

はじめに

今回はみなさんに足の痛みを生じる病気についてお話したいと思います。どうして心臓血管外科の医者が足の痛みの話をするの?整形外科の先生が専門じゃないの?と思われる方もいるかもしれません。確かに、膝や股関節の痛みを生じる変形性関節症は整形外科が専門だし、感染により足部の炎症を起こす蜂窩織炎は内科や外科の対象疾患です。しかし、血管が原因で足の痛みを引き起こす病気がいくつか存在するのです。今回はその中で比較的頻度が高い二つの病気についてお話したいと思います。

閉塞性動脈硬化症

一つ目は閉塞性動脈硬化症(ASO)と呼ばれる病気です。これは足に血液を送る腸骨動脈や大腿動脈に動脈硬化を生じて、血管が狭くなったりつまったりすることで足に流れる血液が少なくなる病気です。典型的な症状は、じっとしているときはどうもないけど、歩いたりすると足がだるくなったり、太ももやふくらはぎの筋肉に痛みが出てくるというものです。病気が進行すると、安静時にもしびれや痛みの症状がでるようになります。さらに病気が進行すると足に壊死を生じ、命にかかわることとなります。足が壊死するまで病院に来ない方はまれですが、糖尿病をお持ちの方は、合併症によって足の神経が障害されて壊死しても気づかないことがあり注意が必要です。治療としては、血管を広げる内服薬、循環器内科で行っているカテーテルで血管を広げる治療、我々心臓血管外科で行っているバイパス手術があり、患者さまの病状に応じた最適な治療を行っています。

急性動脈閉塞

二つ目の病気は急性動脈閉塞と呼ばれる病気です。この病気を起こす方は、心房細動と呼ばれる不整脈を持っていることが多いです。心房細動があると心臓の中の血液の流れがよどみ、心臓内で血が固まり、血栓を生じることがあります。その血栓が血液の流れに乗って全身の血管をつめてしまうことがあります。脳血管をつめてしまった場合は脳梗塞になりますし、手や足の血管をつめてしまった場合は急性動脈閉塞といいます。閉塞性動脈硬化症が徐々に進行する病気であるのに対して、急性動脈閉塞はその名の通り、急に足の痛みが出現し、足が冷たくなったり、チアノーゼといって足の色が紫になったりします。急性動脈閉塞を起こした場合は、緊急で血栓を取り除く手術を行わなければ命にかかわります。

「もしかして」と思ったら

これらの病気を疑った場合、家でも簡単にできる診察があります。足の甲の真ん中あたりで、親指と人指し指の腱の間に足背動脈と呼ばれる動脈があり、健康であれば脈を触れることができます。閉塞性動脈硬化症や急性動脈閉塞を起こした場合、この脈が触れなくなります。逆にいえば、この脈を触れるならばこれらの病気である可能性は低いです。

冬は血管疾患が増える季節ですので、今回のお話で心当たりのある方は、是非一度、循環器内科にご相談ください。