狭心症と心筋梗塞について

循環器内科辻 貴裕

どんな病気?

血液を全身に送るポンプの働きをしているのが心臓の筋肉ですが、そこに酸素や栄養分を運んでいる血管を冠動脈といいます。この冠動脈の血液の流れが一時的に悪くなり心臓の筋肉が痛んで様々な症状が出ることを狭心症といい、完全に詰まって心臓の筋肉が腐ってしまうのが心筋梗塞です。急性の心筋梗塞で現在も4.5割の方が亡くなっています。

原因は?

ほとんどの場合、動脈硬化が原因です。高血圧・糖尿病・高脂血症・タバコ・肥満などが原因で動脈硬化が進み、冠動脈が狭くなってきます。また、まれに冠動脈が一時的に痙攣して狭心症発作が起こることもあります。

症状は?

一般的な症状は、胸の痛み・圧迫感しめつけられる感がします。まれに左肩・あご・喉・胃のあたりに違和感が出ることもあります。また、高齢者や糖尿病の方は神経が鈍くなり症状があまりでないこともあります。これらの症状は、体を動かした時などに1~15分ほど出現するのが典型的な狭心症の症状です。また就寝時や明け方などの安静時に出現するのは痙攣による狭心症の可能性が高いです。いずれにしても30分以上続く場合は、急性心筋梗塞の可能性が高くなります。

検査は?

急性にしても慢性にしても心筋梗塞の場合は、心電図や心エコーですぐに分かります。しかし、詰まる前の冠動脈の狭くなっている所を見つけるのは困難で、安全に行える運動負荷心電図では50~80%程度しか分からず、検査した全員に診断をつけるためには多少の合併症(1,000人に1人の死亡率)を伴う心臓カテーテル検査をしなければいけません。しかし現在は、造影剤を使った冠動脈CTで約90%は診断できます。合併症が少ないこともあり(2万人に1人の死亡率)、冠動脈CTは便利な検査として頻用されております。

治療は?

最終的には心臓カテーテルにて狭くなっている所を評価し、可能であればカテーテルによる治療を行い、風船で拡げたり、ステントという金属性の筒を埋め込んだりして狭い血管を拡げます。しかし、何箇所も狭い所がある場合や、冠動脈の根元が狭い時は、冠動脈バイパス術が必要になります。カテーテル治療による死亡率は約0.5%、冠動脈バイパス術の死亡率は約2%ですが、急性心筋梗塞の死亡率は40~50%であるため、やむを得ない治療となります。冠動脈が狭い所は前兆もなく突然つまることも多いため、症状がなくても動脈硬化のありそうな方は、早めの受診をお勧めします。