「師」と「士」〜同じ「し」とは読むけれど〜

1年次研修医が臨床の現場に出るようになって2ヶ月が経過しました。1年次研修医を指導することをきっかけに初めて「指導医」の立場になった先生達も少なくありません。
1年次研修医が慣れない臨床の現場で悩み苦しんでいるのと同じく、初めて指導医になった先生達も「上手く伝わっているだろうか?」「きちんと成長しているだろうか?」と悩みながら指導しています。さらに「自分自身が発展途上なのに、人に教えることが出来るのだろうか?」という悩みも耳にします。指導医として大切な事は色々とありますが、ここは難しい話は抜きにして、医師としての有りようを考えてみましょう。

4年ほど前になりますが、ある講習会に参加した時のことです。その時の講師が講演で次のように熱く語っていました。

「医師の師は、なぜ師であって、士ではないのか?違いがわかりますか?」

その先生によると「士」には「学問を修めた人」という意味があり、「師」には「学問を教授する人」という意味があるそうです。

「ひとたび師がついている医師になったのであれば、後輩達の指導をすると同時に教師という意味で先生として常に自分自身も勉強し続けなければならない。常に勉強する師の背中を見て、後輩達も医師になっていくのです。研修医の頃は勉強したけれど、今は全然勉強もしなくなったし、後輩達の指導もしないという人は医士と名乗るべきです。みなさんは医士になってはいけない!」

「師」と「士」の違いなど考えた事もなかった私には非常に新鮮な話でした。「医師」として胸を張って生きていくためには、常に勉強し続けなければならないのだと強く感じました。そして同時に発展途上の自分であっても指導医になれるのだと勇気をもらいました。発展途上であっても常に勉強する姿勢を持っていれば、後輩達はそれを見て「医師」になってくれることがわかったからです。

指導医として指導方法も色々と学ばなければなりませんが、こんな医師としての有りようが実は根っこの部分で一番大切なのかと感じた一時でした。