略語の解説その2(NNTについて)

2009年12月11日
略語の解説その2(NNTについて)
救急部長 木村圭一

NNTとはNumber needed to treatの略です。一人の人を治癒させるために何人の人に治療をしなければならないかという指標です。決してNTT(Nippon Telegraph and Telephone Corporation)の間違いではありません。

100%成功する治療というのはありません。例えば、インフルエンザワクチンを投与してもらうと、インフルエンザの発症率が10%から2%になるとします(ワクチンの効果が80%と表現することもできます)(本当の頻度は注を)。これだけでは意味がよく分かりませんよね。

これを別の言い方にすると、危険率が10%から8%減ったと言う事になります。これを絶対リスク減少と言います。1をこれで割ったものをNNTと呼んでいます。この場合1÷0.08ですから(8%は0.08です)12.5になります。約13人の人にインフルエンザワクチンを打ったら、そのうちの一人はインフルエンザワクチンのおかげでインフルエンザを発症しないですむと言うことです。12人は無駄うちです。打たなくても9割は発症しませんし、打っても2%は発症するのですから、、、、え〜そんな風なの???と思うかも知れませんがそうなんです。
もちろんですが、13人打っても必ずそのうち一人が意味があると言う訳ではありません。もっともっとたくさんの人に使って、割合として13人に一人ぐらいと言う事です。

そしてこのNNTが二桁というのは結構良い数字です。ワクチンの効果が同じ80%でも、何もしないと50%発症するのであれば、ワクチンを投与すると10%に減るので1÷0.4でNNTは2.5です。が、ワクチンを打っても1割も発症します。

別の表現をしてみましょう。

宝くじです。以下によれば、昨年の年末ジャンボ宝くじで2億円が当たる確率は1000万分の1だったそうです。
http://www.naxnet.or.jp/~rider/koramu/part1/jambo.htm#samja20

あるお店が2憶円のくじをたくさん出していると言う話がTVなどで報道されています。例えば、大隅鹿屋病院のお店が1000万枚くじを売って、10人が当選したと仮にしてみます。確率は100万分の1です。10倍当たる!!と言うことになります。
ですが、大隅鹿屋病院で買うことに意味があるのは、1÷(100万分の1ー1000万分の1)枚買ってそのうちの1枚です。これは、、、、111万1111枚を買うと意味があると言う事になります。
ですが当然、111万枚買ったとしても当たるとは限りません。1枚しか買わなくても当たる人もいるでしょうし、、、、

宝くじと治療が同じと言うのは不謹慎かもしれませんが、そういうものです。治療を考える場合、この宝くじと同じぐらいのNNTであれば、治療の意味は全くなく、大隅鹿屋病院の売店で(売ってませんよ!念のため)宝くじを買うことに意味はないと言う事になります。

ちなみに、こちらの方は、宝くじに当たるのは交通事故で450回死ぬのと同じ確率だと書いています。
http://ameblo.jp/tadashiohta/entry-10236570247.html

宝くじで夢を買っている皆様ごめんなさい。

こちら(http://rockymuku.sakura.ne.jp/EBM/suuzinosennsutotiikiiryou.pdf)も参考にしてみて下さい。

注 古いデータです(1999年)が、基礎疾患のない医療従事者にインフルエンザワクチンをうつと、インフルエンザの発症者がコントロール群13.4%だったのに対して、1.7%だったとのことです(PMID10078487)。

注 コントロールとは何の治療もしていないとか、偽の薬を投与したとか、そう言った人たちです。コントロールをきちんとしていないと本当にその治療に効果があったかどうか分かりません。インフルエンザワクチンを打った人と,何もしていない人を比べると、ワクチンそのものの効果かも知れないし、ちくっと針を刺したことに意味があったかも知れませんし、きれいな看護師さんに優しく声をかけてもらった事が良かったかも知れません(^_^)。この研究の場合には、コントロール群に対して別のワクチンか偽のインフルエンザワクチンを注射しています。

同じ指標で、NNH(Number needed to harm)というのもあります。何人の人にこの治療を行うと、一人の人に副作用などが起こるかと言う指標です。計算は同じです。