研修医と一緒に当直して嬉しい時

2009年2月17日

研修医と一緒に当直して嬉しい時

研修委員長 田村幸大

当院の1年次研修医は2名のみで4日毎に当直に入っているので、研修医と一緒に当直の時もあれば、スタッフのみの時もあります。

どんなベテランの出来る医師でも研修医の時期があり、最初から何でも出来た人はいません。これは医師に限らず、看護師、
薬剤師などなどすべての職種に共通している事です。「研修医が診察すると時間がかかる」とか「指示が正しいか心配」とか言われますが、
誰にでもそんな時期があり、周囲が時間がかかる事を大目に見て育ててくれたのですから、じっくり指導をしています。

そうは言っても一年目の終わりの時期にもなるとかなりの事が出来るようになっているので、
一歩引いたところで眺めているだけで良い事が増えてきます。

先日、有留先生と当直してる時でした。

腰と足が痛いと言う高齢女性が救急搬入されました。

主訴から考えたら整形外科に入院です。

しかし、なぜか低酸素血症、血圧低下を伴っておりました。そちらは酸素吸入と輸液で改善したものの、原因は何でしょう?

胸部・腹部のCTを施行しましたが、原因となる所見はありません。心電図や採血データでも心筋梗塞を疑う所見もありません。
何よりも痛がっているのは、腰から下だけです。

検査だけ出しまくって身体所見を取らない内科医がよく見逃してしまう病気として前立腺炎や椎体炎、偽痛風などの関節炎、
点滴刺入部の感染などがあると日頃から言っています。椎体を一つ一つ叩いてみましたが、痛がる様子はありません。
足の末梢血管も良く触知できます。四肢を触っていってみると膝が少しだけ熱い感じがしました。
そのつもりでよくよく膝関節を触ってみると少し腫れている感触があります。関節穿刺をしてみると混濁した関節液が引けてきました。
その関節液をグラム染色するとブドウ球菌が多数!

結局、敗血症性ショックだった訳ですが、患者さんの主訴が「腰から足が痛い」と言っていた事と平熱であった事から、
身体所見をしっかり取らなければ、とりあえず鎮痛の処置だけして整形外科に入院としてしまうところでした。

直ちに抗生剤投与を開始し、心内膜炎などの一次感染巣が無いか検索をする事となりました。

「内科」という診療科には花がありません。

「カリスマ循環器医師」や「神の手を持つ外科医」はドラマになりますが、「カリスマ内科医」は未だかつて聞いた事がありません。「手術件数」
や「心カテ件数」のランキングは雑誌に載りますが、「誤嚥性肺炎患者数」とか「敗血症患者数」なんてランキングは当然ありません。
裏方の仕事ばかりでスター的な立場になる事もありません。ひたすら病歴を聴く、身体所見を取る、非常に地味な仕事の日々です。
病院の死亡退院の半数以上が内科の患者さんです。非常に高齢の方も多く、なかなか「治った」という状況に至らない事もよくあります。
「報われない仕事だな~」とため息をついてしまう日々です。

そんな日々の中で、きっちり病歴を聴取する事、身体所見を取る事が、検査では見つける事が出来ていなかった所見を拾いあげて、
治療に繋がりました。その流れを有留先生に見せる事が出来て、「内科も格好良いかも」と思ってくれたかな~と嬉しくなった一時でした。

こんな時間があるから、研修医の先生と一緒に当直する事はやめられません。