輸液の重要性

2008年4月30日

輸液の重要性

研修委員長 木村圭一

 “http://202.133.118.29/trainee_doctor/archives/2008/04/post_93.php”>酸素に続いて重要な輸液について今回は書いてみたいと思います。
研修医の皆さん、このブログが「研修委員長ブログ」にならないよう頑張りましょう!

 輸液は医師が行う治療の中で基本的なものでありながら、最も難しいものの一つです。しかし、
ある程度はルーチンワークでやれますので、勉強しないでもなんとなく指示を出せますし、患者さんのホメオスターシスが優秀なので、
なんとなく治ってしまいます。しかし、、、、治らない場合も多いです。その時にきちんと勉強しているか否かが重要となります。よって、
研修医の時にしっかりと田村先生から学んでおいて下さい。

 これで記事が終わってはいけませんので、救急の時に必要な出血性ショックの時の輸液について勉強しましょう。テーマは3つです。
用いる輸液製剤の種類、輸液の量、輸血についてです。

 まず輸液製剤の種類です。これは細胞外液補充液を使います。別名晶質液、英語ではcrystalloidと言います。生理食塩水、
乳酸リンゲル液などがあります。これらは細胞外液に均等に分布しますので、細胞外液が失われる出血性ショック時には非常に有用です。
アルブミンなどの膠質液(colloid)の有用性については議論のある所です。通常当院では「ソルラクト」
という乳酸リンゲル液を用いています。他の病院へ行くと「ビーンF」
などという酢酸リンゲル液と言うのもあると言うことは知っておくと良いでしょう。

 次に輸液の量です。これは知らない人が案外多いので良く覚えておいて下さい。点滴した細胞外液補充液は、
4分の1しか血管内に残りません。理由は後述します。出血性ショックになっているような人は2リットル近く出血しています。
よって入れなければならない輸液の量は4倍の8リットルです。点滴16本です。これはすごい量です。一般的には「パンピング」
という方法で入れます。少なくとも救急外来では全開で入れましょう。

 最後に輸血です。輸血すると血圧が上がりますので、充分な血管内容量増大効果があると勘違いしている人がいますが、
現在使われている濃厚赤血球は赤血球を入れているだけと考えるべきで、循環血液量は増やしません。よって、輸血は必要でしょうが、
一緒に晶質液も必要です。出血性ショックの時には出血量と同量の細胞外液が失われていると言われていますので、
晶質液の投与は理にかなっています。

 赤血球濃厚液によって循環血液量が増えないと言うことは “http://homepage.mac.com/kekimura/18-31-35.html”>平成18年に行われた救急科専門医の筆記試験
でも出題されています。「赤血球輸血は蛋白成分に乏しく、膠質浸透圧を維持できないので、赤血球輸血は循環血液量の確保には役にたたない。
つまり、血圧の低下に対し赤血球輸血で対応するのは意味がないし、逆にいえば、心不全においても安全に赤血球成分を補充出来る
��ICUチェックブック、第2版、福家伸夫著、メディカル・サイエンス・インターナショナル社、P.67)」そうです。

 出血性ショックの人を見ると「輸血だ!」「アルブミンだ!」(「“http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BF%A5%B1%A4%C1%A4%E3%A4%F3%A5%DE%A5%F3″>タケちゃんマンだ!
」)などと叫ぶ人がいますが、、、、まあ落ち着いて、一休み、一休み、クリスタロイドを入れましょう。

 前回の記事と重なりますが、こう言った時にはサーチ(SpO2)が100%でも酸素が必要です。酸素投与も忘れずに。

<参考>

 何故4倍の輸液が必要かについて。

 ヒトの水分量は、体重の約60%と言われています。40%は細胞内に、20%は細胞外にあります。20%のうち15%は血管外、
血管内に5%とされています。

 浸透圧の関係で、血液などと等張の細胞外液補充液は、点滴されると血管内の細胞外液に入り、血管外にも分布しますが、
細胞内には入りません。よって体重の20%の部位に広がるので、5÷20=25%あるいは4分の1しか血管内に残らないと言う訳です。

 また5%ブドウ糖だとただの水ですから、60%に均等に広がりますので、血管内には(5÷60=)12分の1しか残りません。

 色々な所で輸液のインアウトがどうこうですと報告を受けますが、
これだけを見てもインアウトは急性期にあまり意味がない事が分かりますね。