患者さんの前では研修医も指導医もありません

2008年1月19日

患者さんの前では研修医も指導医もありません

研修委員長 木村 圭一

 私が初めて受け持った腎臓癌の患者さんの話です。というか腎臓癌の患者さんは一人しか受け持った事がないので、唯一の患者さんです。
その方は、ある病気で通院されていて、たまたま胸部レントゲンを撮影したら多発転移が見つかり、その原発巣を探すために入院され、
内科研修中の私が受け持たせて頂きました。

 原発巣を探すと言っても特別な事はありません。腹部エコーをしたらすぐに分かりました。腎臓に腫瘤を認めると言う訳です。
今だったらそれ以上何もしないのかも知れませんが、私の勉強と血管造影手技の訓練(と言ったら有馬先生に叱られそうですが)のためでしょう、
血管造影をする事になりました。

 病状説明も私がさせて頂きました。「血管造影をしたら癌かどうか分かるから」という説明をしました
��もちろん自分で考えたのではなく、指導医の山田(仮名)先生にこう話なさいと言われたのです)。
話をした事もなかったこわ?い泌尿器科の林(仮名)先生に相談し、血管造影当日になりました。患者さんが検査室へ来られるまで、
林先生の試問がありました。

 手技を最初から説明しなさいと言うのです。こわ?、、、、まず両鼠径部を消毒して
��一方が入らない時に反対にするので両方消毒すべしと私が読んだ本には書いてあったのです)、局所麻酔をして、
穿刺をしてガイドワイヤーを入れて、、、、、と。一生懸命読んだので完璧だったと思います。林先生の顔が笑顔になり、よし!
君にやってもらおう!しかし、今はシースと言う最新の器具があるから、それも使おう!(シースと言うのは説明するのは難しいですが、
別に最新でも何でもなく、私の読んだ本が古すぎたからだけでした)と言われました。嬉しかったです。初めて血管造影は無事に済み、
やはり癌であろうと言う結果でした。

 患者さんにはやはり、結果はどうだったのかと聞かれました。どう説明して良いか分からず、
今日は結果が分かりませんからと逃げてしまいました。指導医の山田先生に押し付けようと思った訳です。しかし、
山田先生からは先生から説明しなさいと言われました。しかし、私は逃げ続けてしまい、患者さんの元へはあまり行かなくなってしまいました。
指導医の山田先生は、私とは別に毎日診てくれていたのですが(癌だと言う説明もしてくれたのかも知れません。
昔の話なので忘れてしまいました)、ある日患者さんが退院すると言って聞かないと看護師さんから言われました。

 患者さんによれば、木村先生が毎日来てくれなくなったので、自分は見捨てられたんだと思う、、、
だから温泉でも行って治しますと言うことでした。私の気持ちの中には、自分は1年目の何も出来ない研修医だから、
自分には責任はないので指導医の先生がちゃんと診てくれているから、、、と言うのがありました。しかし、
患者さんにとっては私の方が重要な医師だったのでしょう。非常に申し訳ない事をしました。もともと肺に転移があった方ですので、
たぶん亡くなったのでしょうが、今でも血管造影をさせて頂く時にこの患者さんの事を思い出しますし、
研修医の先生達にも自分が指導医よりも重要な医師であると言うつもりで接するように話しております(よね、皆さん、していないかな)。

 患者さんにとって目の前に現れる白衣を着た男性(女性は看護師さんと言われる事が多いですね)はみんな医者で、
ベテランも初心者もないと言う事をよく覚えておく必要があります。

 この話、記事にしたような気もするのですが、、、、もし重複していたら笑ってやって下さい。最近物忘れが激しいので、
頭部CTを本気で撮ってもらおうかと考えています(^.^)。